伝統を継ぐということ

政治・経済

これは269回目。安倍政権がスタートを切った時点では、外人訪日客数は年間860万人ていどでした。それが、2800万人になろうとしている。オリンピックまでに4000万人にしたいといいます。

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なぜこうも日本に外国人客が来なかったのかは、為替の影響によるものだという人が多いが、不思議なことである。日本は、経済はだんだん回復しつつあるものの、社会・文化がそう激変しているわけではなく、むしろ以前とほとんど変わっていないだろう。

日本が変わったというよりも、外人の視点や興味が変わったのかもしれない。正直、韓国には、旅行で訪れる場合に見どころのバリエーション(選択種類)が非常に少ない。中国は一見多いように思えるが、これも実は非常に限定的なのである。

自然のすごさと言うことを言えば、いくらでも世界に、目を見張るような風光明媚な場所はある。なにも、韓国や中国くんだりまで足を運ぶ必要は無い。ここ数十年で、欧米旅行客は思ったのではないだろうか。

以外に穴、だったのは、日本である。韓国や中国とは比べ物にならないくらい、史跡、自然、民俗・民芸、ライフスタイル、食文化など、驚くほどバリエーションが豊富な国である。この小さな国に、なにゆえこれほどの多様性が、共存しているのか、日本人もよくよく振り返ってみれば、驚くことが多いほどだ。

それが、ネットによってあまりにも膨大な情報となって、世界に拡散したのだろう。つまり、欧米人は、従来のステレオタイプの日本文化というものが、いかに表面的なものにすぎず、奥に入れば、いくらでもサプライズが潜んでいるということを、ネットによって知ってしまったのだ。

ブームであるから、盛り上がることもあれば(いまのように)、あるていど冷めていく期間も訪れるだろう。しかし一度知ってしまった日本の不思議さ、面白さというものは、彼らの心をとらえて放さない。それだけの日本文化が持つ吸引力を、残念ながら、ほかのアジア諸国、たとえば、韓国や中国には、無いのである。

たとえば、創業200年を超える老舗の企業というものは、日本は3937社。これは2009年時点の調査であるが、およそ4000社だ。世界でも、ダントツのトップである。

第二位は、これも驚きだが、ドイツである。1850社。第三位はさすが大英帝国なのだが、なんとその株は、ケタ違いに少なく467社だ。第四位がフランスの376社。ちなみに、中国は、革命ですべて潰れてしまったのだろうが、わずか75社である。

この数値だけが、文化の重厚さを意味するものでないことはもちろんなのだが、それでもデータとしては、なぜ欧米人が日本に多くやってき始めたのか、説得力のあるデータだ。

ドイツが多いというのも面白い。要するに、第二次大戦の敗戦国二つは、国土が焦土と化したにもかかわらず、歴史を実に古く残しているということになる。ある意味、社会や文化の硬直性が高いということでもある。つまり、頑固なのだ。従って、変化には機動的ではない、という難点の証明にもなるかもしれない。



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