不思議の国、アメリカ

政治・経済

これは290回目。よく日本のことを知らない外国人から、「不思議の国、ニッポン」と揶揄されたりしますが、とんでもない、アメリカこそ世界で一番不思議な国なのです。

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現在、大統領選挙を控え、民主・共和両党の代表指名を巡る戦いの真っ最中である。この大統領選挙制度そのものが、実に不思議だ。

そもそも、候補者は民主・共和両党のいずれかに所属していなければ、大統領になれないということだ。二大政党政治とは、歴史的、慣習的にそうなっているにすぎないのだが、実際には絶対的な制度として存在しているわけだ。

アメリカには大統領の間接投票(大統領投票人選挙)という、240年前の建国時の制度がある。建国以来、1回も改められることなく残っているのだ。一見、国民投票のように見えるが、直接選挙ではなく、選挙人制度という1ステップが入ることによって、間接選挙になっているのだ。

米大統領選は、大きく分けて、民主・共和両党の候補者を1人に絞る「予備選挙」と、両党の候補者から大統領を選ぶ「本選挙(一般選挙)」とがある。

1月から7月まで、たとえば民主党では全米50州で「予備選」または「党員集会」が行われ。(予備選は非公開投票、党員集会は公開投票だ。

この予備選・党員集会では、各州の有権者が、自分が選びたい候補者を支持している「代議員」に投票する。現在なら、○○州の有権者が、エリザベス・ウォーレン候補に投票したい場合は、「ウォーレンを支持している代議員」に投票するわけだ。

ここにも不思議はある。日本の選挙制度における、一票の重みの格差問題があるが、アメリカでも、この代議員は、州によって人数が異なり、人口に比例して配分されており、有権者の一票は、けして同等の重みをもった一票ではない、ということだ。

かくしてこの結果、各候補は得票に応じた代議員の人数を獲得し、この獲得人数が多い方が優位に立つ。

こうして、来年は夏までの長い期間、次々と各州で予備選挙が行われていくのだが、その過程で、勝ち目がないと思った候補者は自分から撤退していく。

この予備選挙の最大のヤマ場は「スーパーチューズデー」と呼ばれる3月第1週の火曜日だ。

このスーパーチューズデーというのは、各州で行われる予備選で、最も多い投票日が集中することから、ここで候補者は一日で最大の得票をすることになるので、とくに注目されているわけだ。

その後も7月末まで、各州で予備選挙が行われ、党の「大統領候補」が1人に絞られる。そして7月に行われる「全国党大会」で、全国の代議員が集合し、党公認の大統領候補が指名される。

こうしてみると、この7月の両党の大統領候補が決定されるまで、有権者たちは、要するに、大統領を選んでいるわけではなく、「代議員」を選んでいるにすぎない。

さて、ここから本戦である。本選挙は、共和党候補と民主党候補の「一騎討ち」となり、約2カ月間の選挙戦に突入することになる。

ところが、である。この段階でも、不思議なことが行われる。11月の「一般投票」という大統領選挙当日というのは、有権者が今度は各州の「選挙人」を選んで投票することになるのだ。

「選挙人」は、予備選の時の「代議員」と同じように、どちらの候補を支持しているか表明しているので、有権者はどちらかの党のグループに投票し、間接的に大統領を選ぶわけだ。

さあそして開票。これがまた面白いシステムで、その州で1票差であっても最多得票となった政党が、その州全体の選挙人の人数すべてを獲得できる(「勝者独占方式」)。どう考えても、「いびつ」としか思えまい。

このような形で、各州の勝者と、獲得した選挙人の数が決まる。選挙人は全米で538人存在しているので、その過半数の270人以上を獲得した候補者が、大統領となるわけだ。

その後も形式だけだが、選ばれた選挙人が集まって12月に投票し、開票は来年1月に行われ、1月20日に正式に新大統領が就任する。

どうだろうか。日本では、首相を国民が投票で選んでいるわけではないから、完全に議員内閣制に基づく間接選挙なのだが、アメリカを直接選挙というわりには、国民が直接大統領候補本人に投票していないわけであるから、どうも釈然としないものがある。

このアメリカという国の不思議さは、大統領選挙だけではない。連銀もそうである。閑話休題では、何度かこの異様な組織の存在について書いてきたが、多少重複するところはあるが、改めて見てみよう。

そもそも、という話からだが、ドル紙幣そのものが、不可解なのだ。世界通貨であるドル紙幣を発行する連銀(FRB、FED)は、「ドルの発券銀行」ということになっている。いかにもアメリカ政府機関のような、紛らわしい米国連邦準備制度理事会という名前だが、すでにご承知のように、完全な民間銀行12行の集合体である。

日本の中央銀行である国有の日本銀行( 51%以上の株式を国家=財務省が所有)とは大違いで、アメリカ政府は1株も保有していない。つまり、政府とは無関係な、純粋な民間会社(私企業としての一銀行)だということだ。

日本銀行が発行する円紙幣にははっきりと、『日本銀行券』と書いてある。ところが連銀が発行するドル紙幣には、何処にもアメリカや米国政府の文字は「無い」。ご自宅にアメリカのドル紙幣があったら、良く見て欲しい。

このドル紙幣というのは、アメリカ政府が発行する債券(国債)を担保に、ニューヨーク連邦準備銀行など12の地区連銀が政府に貸し付けた『債権証書』にほかならない。

ドル紙幣の裏面には『In God We Trust』(我々の信じる神の下で、あるいは我々は神を信じるという意味)と書かれている。これ自体、一体なんなのだ、と思ってしまう。「われわれの信じる神」とは誰のことなのか。

そして、表側にははっきりと『Federal Reserve Note』と印刷されており、文字通り連銀=連邦準備制度理事会の「小口の利子のついていない債権証書」だということだ。

アメリカでは1776年の建国以来、何度も中央銀行設立が試みられたが、色々な妨害にあい、一向に中央銀行は成立せず、個々の銀行等が金準備を使って紙幣を発行していた。

現在の連邦準備制度理事会は1913年12月23日クリスマス休暇で、多くの上院議員が休暇で不在の隙を突いてクーデター的に成立している。

さてここで問題である。米国憲法第1条などで、「貨幣の発行権は、議会だけが独占的に持つ」ということになっている。したがって、現在のドル紙幣は、一般の通貨と見かけや機能はまったく同じものの、いわゆる貨幣(通貨)ではないのだ。

したがって、議会を通じて、本当の米国通貨を発行しようものなら、たちまちリンカーンやケネディのように暗殺され、発行された本物の米国通貨は即座に回収され、なかったことにされる。

もし、現在の連銀発行のドルを「通貨だ」とするなら、それは、明白なアメリカ憲法違反である。ドルとは、あくまで『利子がつかない小額の連銀の社債』なのだ。

しかも、驚くべきことに、この米国の『利子がつかない小額の銀行社債』の債権証書(ドル札)が米国内のみならず世界の基軸通貨になっていることだ。

ドルは名称自体が銀行券ではなく、フェダレル・リザーブ・ノート(連邦準備券)である。そして、公的債務・私的債務の支払い手段として使えることが明記されているが、それは、国家が国債債務の履行を通じてドル紙幣の債務を保証しているからという論理になる。

ドル紙幣は、連邦準備制度(銀行団)がアメリカ政府から受け取った『利子がつく巨額な米国債』を1ドル札や、5ドル札、10ドル札といった小額の価額表示をした紙切れに分割して流通させているという、実に不思議な制度なのだ。

連邦準備制度は、金などの実体価値の保有などなくとも、通貨が発行できるという『画期的な中央銀行制度』であり、言い換えれば、『金本位制』ではなく、『米国債本位制』の通貨であるとも解釈出来る。(もっとも、現時点では連銀が、単体としては世界最大の金保有者であるが。)

日本銀行は51%の株式を国が握り、国家の管理化に有るとされている。したがって利益が出た場合には国庫に入る仕組みになっている。これとは大きく違うのが、100%の民営の発券銀行であるアメリカの連邦準備制度理事会の仕組みである。

連銀はアメリカの発券銀行で有るばかりか、国際通貨でもあるドル紙幣を唯一発行しているが、驚くべきことに全株式の100%はロックフェラー家やロスチャイルド家を含むプライベートなエスタブリッシュメント(支配者)が握っているのだ。

そして、この場合には当たり前だが一般の民間銀行と同じで、利益が出れば株主に配当として分配される仕組みなのだ。

これは、歴史的に見ればそれほど珍しくなくて、数百年前の資本主義の黎明期には日本を含む全ての国が今のアメリカと同じ仕組みだった。

国家(アメリカ)が破綻して財政が大赤字になれば、その穴埋めの為に政府は国債を大量に発行する。有利子の米国債を連邦政府から、タダで受け取り、同額の無利子の米ドル(連邦準備券)を発行することで連銀は丸々膨大な利子分を利益とすることが出来る。これこそ、無から有を生む、おどろくべき連銀という制度の「からくり」である。

しかもこの利益には法律により税金が付かないのだから、リーマンショック以来の不況による国債の大量発行で史上最高益をFRBは手に入れたことになる。

何とも不思議なアメリカの連銀制度の仕組みとは、冷静に考えてみれば素晴らしく良く出来た金融犯罪であり、合法的な強盗か山賊に良く似た行為に等しい。

日本銀行と日本国とは一体のものだ。例えて言うなら、夫婦で同一会計なのだ。したがって夫(日本銀行)が大儲けすれば自動的に妻(日本国政府)の財布が潤うことになる。

ところが、連銀 とアメリカ政府の関係は、全く無関係な独立体同士であり、会計が別々なのである。中央銀行の独立性とは、まさにこのことだ。いや、それどころではない。政府でさえ、連銀の奴隷に等しい。

長年生活を共にしているが、結婚しない男女の同棲関係に似ている。しかも、普通の同棲関係ではない。非常に例えは悪いかもしれないが、要するに売春婦(アメリカ合衆国)の稼ぎを強制的にピンはねして食い物にし、いわば寄生している「やくざなヒモ(連銀)」のようなものだということだ。

わたしが、ときに冗談で「アメリカという世界最大の組織暴力団が…」と言ったりするのも、けしてただの冗談ではない。



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