危ないお仕事

政治・経済

これは301回目。アメリカという社会は、思考が極端な方向に走りやすい感じがします。韓国とは違った意味で、大きく世論がブレるのです。かつて、酒は悪だという原理主義的なプロテスタントの観点から、「禁酒法」という悪法を成立させたことがあります。第二次湾岸戦争では、ブッシュ(ジュニア)大統領が、イラクやイランを「悪魔」だと名指しするなど、どうもその言動には日本人として違和感があります。日本の首相が、金正恩氏を公式の場で、「悪魔」と表現するでしょうか。

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歴史的に、アメリカ人の間で恐怖を持って語り継がれてきた「呪い」がある。「テクムセの呪い」と呼ばれるものだ。かつて1811年に、ティピカヌーの戦いで殺されたアメリカ・インディアン、ショーニー族の酋長テクムセが、合衆国にかけた呪いである。

それは、20年ごとに選ばれる大統領の死を呪ったものと言われる。呪いの犠牲者は次の通りだ。1840年から1960年までの間に、「20で割り切れる年」に選出された大統領はみな、在職中に死去している。

1840年 – ウィリアム・H・ハリソン、1841年4月4日に肺炎で急死。
1860年 – エイブラハム・リンカーン、1865年4月14日に暗殺。
1880年 – ジェームズ・ガーフィールド、1881年7月2日に暗殺。
1900年 – ウィリアム・マッキンリー、1901年9月14日に暗殺。
1920年 – ウォレン・G・ハーディング、1923年8月2日に心臓発作で死去。
1940年 – フランクリン・ルーズベルト、1945年4月12日に脳溢血で死去。
1960年 – ジョン・F・ケネディ 、1963年11月22日に暗殺。
1980年 – ロナルド・レーガン、1981年3月30日に暗殺未遂。任期満了、退任15年後の2004年死去。

ただ、レーガン大統領は暗殺未遂があったものの一命を取りとめ、任期を満了している。これ以降、ブッシュ(父)大統領など、みな在職中に亡くなってはいないので、ようやく「呪い」が解けた、のかもしれない。

それにしても、トランプ大統領まで45人の大統領が選出されたが、7人が在職中に死亡しており、うち4人が暗殺されている。ちなみに、日本の総理大臣は明治以降、62人目(安倍晋三氏)を数えるが、このうち暗殺されたのは、原敬、浜口雄幸、犬養毅の3人である。しかし、総理大臣の職を引いてから伊藤博文、斎藤実も暗殺され、非業の死を遂げた。

アメリカの大統領は、9%の確率で暗殺されたことになる。日本の総理大臣は5%の確率だが、総理経験者の暗殺を含めれば、その確率は10%に跳ね上がる。いずれにしろ、国家のトップに立てば、それなりのリスクが高まるのは確かだ。交通事故で死亡する確率は、年間の交通事故による死亡者数が3万人として、1億2000万人の人口対比では0.025%(米国では0.03%)である。飛行機事故で死亡する確率にいたっては、0.0009%にすぎない。やはり、政治家というのは相当危ない職業のようだ。



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