飽食の時代~世界で一番健康的な食事とは?

雑話

これは13回目。かなり驚くというか、拍子抜けする結論です。

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中国人が飽食の時代を迎えているのだ。かつて、長年中国を渡り歩いていたころ( 80年代)、中国人経営の料理屋で刺身を食おうと思ったら、大連くらいにしかなかった。それはおそまつなものだった。それが今では一般家庭でも、こぞってマグロを刺身で食べているという。驚天動地の変化だ。

世界の野菜の半分を、実は中国人が食べている。豚肉は43%。水産物は37%。この食べっぷりは、所得の増大によって加速している。石油をガブ呑みするなど、まだかわいいものである。

もともと、中国人は牛肉をそれほど食べなかった。しかし、いまやその美味さに味をしめたらしい。牛肉の消費量がうなぎのぼりだそうだ。そしてこの中国で起こっている現象が、やがてインドや、その他の大人口を抱えた新興国家群に波及していくことは、火を見るよりも明らかだ。

中国人の大好きなフカヒレも、乱獲によって世界中でサメが取れなくなっているという。

ことは、肉だ、魚だ、というレベルにとどまらない。というのも、牛肉1キロをつくるのに、飼料としてトウモロコシ11キロが必要になる。豚肉なら7キロ。鶏肉なら4キロ必要だ。おまけに、トウモロコシは「地球にやさしい」エタノール燃料にも使われるから、半ば飼料と燃料用とで取り合いの構図となっている。

ある試算によると、60億を数える世界中の人間を、ぎゅうぎゅう詰めの満員電車に押し込んだ状態にしたら、ちょうど香港にスッポリおさまるというのだ。香港といったら、東京都の面積の半分しかない。そこに世界中の人間が立てるというわけだ。

人間などというものは、なんとちっぽけな存在であろうか、と思い知らされる一方で、戦慄すべき事実が語られている。その世界の人口を食わせるのに、ロシア一国の農地面積が必要だというのである。

しかもこれは必要最低限の計算だというから、飽食化がすすむ今日、おそらくロシア一国ではとてもすまないことだろう。

ところが、かたや世界では、1日に500万ヘクタールの土地が砂漠化している。日本の全耕地面積465万ヘクタールより広い土地が、毎日砂漠化していっているというのだ。これではとても計算が合わなくなってくる。

お先真っ暗、という状況なのだが、ここに1つの清涼剤となるような話もある。アメリカで、当局が長年膨大な研究予算をつぎこんだ、「もっとも理想的な食生活とはなにか」という研究結果がある。

4人に1人が肥満だというアメリカ人の食生活の改善は急務である。医療費保険・負担の問題からも、最重要課題の1つである。だから、過去にさかのぼって、世界中の食生活と健康状態のデータを集め、徹底的に研究したわけだが、その結論というのは、いささかわれわれには拍子抜けするようなものだ。

なんのことはない、昭和30年代の日本の一般家庭の食生活だというのである。野菜、豆、芋、水産物を主体としたおかずと、適度な動物性タンパク源(当時は、コロッケの中の貧弱なひき肉や、良くてもせいぜいベーコン、ソーセージくらいのものだった)、味噌汁というビタミンや栄養の補完食、そしてなにより、主食と副食が厳密に区分されているというバランス。

言われてみればそのとおりなのだが、それだけの年月と予算を使ってこの結果かと、呆れてしまうのは日本人ばかりだろうか。

世界の食料需給の逼迫、飽食の世界化というのも、やがては問題にもならなくなるのかもしれない。このアメリカでの研究結果の意味に世界中の人が気づけば、ことは一瞬で解決してしまうからだ。



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