森林浴

雑話

これは395回目。

森や、海沿いではマイナスイオンが多く、体に良いという話があります。海はしかし、なにしろ直射日光が凄い。若いときであればともかく、年齢もかさんでくると結構しんどいものです。

:::

それにくらべて、森林浴というのは、そうした心配が少ない。このほど、旭川医大の研究チームが、森の中に多い「フィトンチッド」と呼ばれる香り成分が血中に取り込まれることを突き止めた。森林浴が、リラックスにつながるメカニズムの解明に役立つかもしれない。

フィトンチッドは、松などの樹木が放出する揮発性化学物質の総称だ。アロマテラピー(直訳すると、芳香療法)の精油に含まれることが多く、血圧低下や免疫力を高める効果も報告されている。

実験は、以前、北海道津別町の屈斜路湖周辺で行われたという。森林を1時間歩いた男性4人の血液を10mmずつ採取し、ガスクロマトグラフ質量分析計で調べると、森を歩く前に比べて、フィトンチッドに相当する数種類の化学物質の濃度が高くなっていたというのだ。

フィトンチッドは肺で吸収された後、血液中で濃縮されているのではないかという。肝臓の活動を高める酵素の活性化、香りによる清涼効果、生理機能の促進など、確かに数多くの効能が指摘されている。

なかなか森にまで出かけることができない、という向きには、今の時代、たとえば檜(ひのき)の成分であるヒノキチオールなどを含ませた、アロマグッズがわんさか開発されている。檜枕、檜椅子、檜の香り玉、檜石鹸始め、その商品項目はおびただしい数がある。

残念ながら、国内で用材に供される檜は樹齢が若く、フィトンチッドが無い、あるいは少ないらしい。実際、伊勢神宮に遷宮などで使われる大檜は台湾製だという。そもそも、ヒノキチオールは台湾製の檜から発見されたものなのだそうだ。

もともとフィトンチッドとは、「フィトン(植物)」が、「チッド(他を殺す)」ために、つくり出した成分で、殺菌・殺虫力のあるテルペン化合物が主体。それらは、最近やカビを殺すとともに、人の皮膚や喉の粘膜を刺激して、中枢神経に作用し、人体に有益な働きをすることが以前から知られていた。

しかし、なにも檜ばかりではない。さまざまなフィトンチッドはある。たとえば、「いぐさ」である。藺草(いぐさ)は、別名燈芯草といって、昔油で灯(あかり)を採っていた時代に、花茎の髄を燈芯として使ったことに由来する。

いぐさには、湿度が40%を超えると吸収し、下回ると放出する吸湿・発散作用がある。また抗菌作用や、二酸化窒素・ホルムアルデヒドなどの有害物質(ハウスシックの原因)を吸着するという優れた機能も報告されている。

そしてもちろん、いぐさに含まれているフィトン・バニリン(バニラエッセンスの成分)には、リラックス効果がある。古来から日本人に親しまれてきた植物なのだが、白状すると、恐るべきことに我が家には畳の部屋がない。



雑話