沈黙の支持者が、トランプに流れ込む~BLM運動は逆効果。
356回目。
米大統領選挙の話だ。
一般にアメリカ大手メディアも、それをただ垂れ流すしか能がない日本のメディアも、民主党バイデン候補が圧倒的に有利となっており(世論調査の支持率では、10ポイント以上の大差でバイデン優位となっている)、バイデン当選は確実であるかのような報道がまかり通っている。
おそらく、これは覆される。
前回、ヒラリー・クリントン民主党候補のときにも同じような現象が起きた。あのときには、選挙当日まで、クリントン圧勝の下馬評だったはずだ。
しかし、今回は、あのとき以上に、もう今の段階でトランプ再選が必至という状況かもしれないと、わたしなどは思っている。
2つポイントがある。
1つはBLM(Black lives matter・・・黒人は生きる権利がある。黒人差別反対運動の標語)運動は、かえってむしろトランプ大統領再選に有利に働くということ。
もうひとつは、中国という外敵のオウンゴールが、トランプ大統領への支持率を高める。
チャイナ・ファクターはもちろん相手があることなので不確定だが、中共政府が「トランプは負ける」と踏んでいるとしたら(そう見ている可能性が高いのだ)、局地的にだが台湾侵攻という選択肢を敢えて取るという可能性があるのだ。
まず、BLMの問題から行こう。
独立記念日7月4日の前夜、トランプ大統領はあの有名なラシュモア山を背景にして、演説を行った。そこで「BLM運動は、極左ファシズムであり、彼らはアメリカの歴史を書き換えようとしている」と痛烈に非難した。
これが、バカ受けだったのだ。
一般的な世論調査では、たしかにバイデン候補は圧倒的優位に立っているかのように見えるが、およそ信用に足らない。むしろ英国の複数の調査会社が指摘しているように、アメリカの「沈黙のトランプ支持者」の存在が、カウントされていないのである。
「綺麗事」ばかり並べ立て、黒人を差別するなといいながら、白人を「逆差別」するかのようなBLM運動が、全米の「物言わぬ有権者たち」の指示を得ることはできないだろう。
彼らは、南北戦争において、南軍に立った軍人や著名人たちの像を引き倒している。それを言い出せば、アメリカ建国の初代大統領ワシントンですら、当たり前のように黒人奴隷を家庭内で使用していたのだ。
およそアメリカ建国以来、ほとんどすべての指導者たち、英雄、偉人は、教科書から抹殺され、非道な人物であったと烙印を押されることになるだろう。
今、中国や、韓国で、そうした歴史改竄をしていることと、同じ現象が起こるのだ。
アメリカの大多数の「物言わぬ有権者たち」は、表だって「トランプを支持する」とは言いにくい。言えば、変な目で見られるからだ。「綺麗事」が表正面をまかり通る悪しきリベラルという風潮が、彼らをして沈黙させているのだ。
この「物言わぬ有権者たち」の多くは、「沈黙のトランプ支持者」たちと、かなりオーバーラップしている。
また、両候補のコア(中核)を占める、「熱狂的支持者」では、トランプ大統領の場合、支持者の7割以上がこの熱狂的支持者だ。バイデン候補の場合は3割くらいしかない。
メディアは日米ともに、この現状を見誤っているとわたしは思う。
前回のトランプvsクリントンのときには、さすがにわたしも、どちらが勝つかわからないと思っていた。世の中はクリントン旋風が巻き起こっていたが、結果がどうなるか、わたしはまったく予想がつかなかった。
はっきり私が述べていたのは、クリントンになってもアメリカはあまり変わらない。しかし、トランプが大統領になったら、少なくとも株式相場は暴騰、大相場になる、ということだった。レポートでも、セミナーでも繰り返しこの点は強調していた。だから、市場に意思があるとして、それが大多数の有権者たちの「本音」をかなり代弁しているとしたら、トランプが勝たなければおかしいのだが、ということまでは述べた。
果たして、結果はトランプ当選、ご存知のようにその後株式相場はとんでもないブル(強気)相場に発展していったわけだ。
今回も似たような感じがする。
民主・共和両党は、来月の大会で最終的な候補を決める。そこからが本番だ。テレビ討論会、ディベートも予定されている。
現在、バイデン候補は、これまでのさまざまな討論会などで、質問の内容を忘れたり、挙げ句の果ててには自身がどこに立っているのかもわからなくなるなど、(気の毒といえば、気の毒なのだが)どうも老人性痴呆症、認知症などになっているのではないかという噂が絶えない。
全米が集中するテレビ討論会でその醜態を晒す羽目にでも陥った場合、バイデン当選は一瞬でゼロになる。
これはともかくとして、トランプ憎し、トランプ潰しのために起こったようなものであるBLM運動は、その過激化と、黒人だけが逆差別的に持ち上げられて、多くの白人やその他の有色人種が、あたかも「割を食う」ような状況にすら陥っている。
誰も、このような運動を支持しようとは思わないだろう。とくに、「もの言わぬ有権者たち」はそうである。
ヒスパニック系、黒人系の有権者たちの間ですら、実際には3分の1がトランプ支持である。
こういう側面を、日米の大手メディアは一切報じない。
11月、メディアの偏向報道というものが、前回以上に醜い現実を露呈することになるのではないだろうか。
もう一つの中共による、台湾侵攻の選択肢だが、これはもちろん台湾全島を標的としたものではない。米中全面戦争になることは間違いないからだ。
ただ、国内にあっても権力闘争の観点からいって、おそらく四面楚歌に陥っている習近平政権としては、大手メディアの報道を信じて、トランプ敗戦と踏んでいるのであれば、なんらかの台湾侵攻がこの夏にも起こるリスクというのは、潜在しているだろう。
長江流域の洪水・水害は、三峡ダムの放水による人災の側面があまりにも大きい。これが習近平政権の致命傷の一つになるはずだ。
さらに、ウイルス感染拡大は、すでに北京で猖獗を極めており、301軍人病院に感染多発していると言われている。指導者7人やその家族の主治医がいる病院だ。
もう6月以降、7人の消息が不明で、ほとんど報道に出てきていない。
新華社では、なんと何年も前の「大阪サミット」で習近平主席が重大発言をした、などというとんちんかんな記事を掲載していたくらいだ。
彼らが感染して隔離状態になっており、政務を取れない状況になっているのか、それとも感染しないように、安全地帯へと避難しているのかはつまびらかではない。
習近平主席と確執が激しくなっている李克強首相は、少なくとも6日に、指導部7人の中では唯一、初めて水害に見舞われている貴州を訪れ、惨状を率直に記者団に述べている。
李克強首相の人望が相対的に浮上し、習近平主席への怨嗟はマグマだまりのように増大している。
香港でも9月の議会選挙を控え、予備選が始まった。強権発動で、無慈悲な民主派への弾圧が甚だしくなっており、外人報道員への中共官憲による暴行も多発している。
おまけに、武漢ウイルスに加えて、線ペストや豚コレラがここへきて、北京はじめ華北で急速に蔓延し始めている。
先の全人代でも、相変わらず今年の経済成長率6%台で発表したかった習近平主席に対して、「実現できもしない目標を掲げるなど冗談ではない」といって李克強首相が拒否したため、前例のない「経済目標を設定しない」という前代未聞の事態になったのは、よくご存知の通りだ。
年収18万円しかない労働者が人口の半分、6億人もいるのだといって、経済政策の失敗を外人記者団の前で吐露した李克強首相には、人民の支持層がおそらくかなり浸透しているように思う。
共産党幹部の師弟である、二世たち「太子党」の代表であり、毛沢東・鄧小平につぐ3人目の、カリスマを夢見る誇大妄想狂の習近平主席。
血筋と関係ない、叩き上げの共産党青年団出身で、経済実務畑の現実主義者、李克強首相。
テールリスクが勃発するとしたら、習近平降ろしのクーデタや内乱暴動というおよそ考えたくもないような事態は、一応頭に入れておいたほうが良いかもしれない。
この窮地を習近平主席が強行突破しようとすれば(辞任は考えられない。自分が、多くの人を粛清し、殺害してきたから、今度は自分がやられる羽目になる。)、外部に紛争を起こして、人民の愛国感情に火をつけ、一気に求心力を高めるしかない。
それが、中印国境紛争であり、南シナ海での軍事演習である(米国は空母2艦を投入し、あからさまにこれを牽制した)。
が、これでは自分の失政を補って余りあるほどの効果はない。
しかし、台湾侵攻だったらどうだろうか?
これは一発で、すべての失点をカバーし、一躍「英雄」になれるチャンスがでてくるのだ。
といって、台湾全島支配・統一は、さすがに無謀である。
ここで一番ありうるとしたら、台湾領である金門・媽祖の両諸島の武力統一であろうか。
金門島などは、アモイとの距離、わずか2.1kmしかない。数千隻の漁船にしたてた、実質人民解放軍が、一斉に未明に四方八方から上陸を開始したら、もはや台湾軍は手も足も出ない。
半日で、陥落するだろうし、戦闘被害者も最低限で済むだろう。
なにより、大陸から目と鼻の先の台湾領の奪回である。中国人は大歓声を挙げるに違いない。このくらいのことはやりかねない、それほど習近平主席は追い詰められていると思うがどうだろうか。
小さな島2つだけであるし、国際世論を敵にするといっても、まあ西側はただ泣き寝入りするだけで終わるだろうと、習近平主席が考えるとしたら、それは甘いだろう。
アメリカは、台湾の独立承認に踏み込む発言をするだろうし、なにより武力介入に対する国際世論の激しい非難をうまく利用するはずだ。
アメリカは武漢ウイルス発生序盤における、中共・WHOの隠蔽行動を炎上させ、台湾への武力介入問題と合わせて、徹底的な北京糾弾の集中放火を浴びせることになるはずだ。
これまでは恫喝だった、香港への最恵国待遇のステータスを剥奪し、香港ドル=ドル・ペグ制度を外し、中国国債による資金調達の7-8割を占める香港を、潰すであろう。
すでに、TIKTOKの米国内での禁止運動が始まっており、あらゆる中国企業が締め出されていくはずだ。
反中感情がかつてないほど高まっているアメリカで、この中共の局地的な武力侵攻は、大統領選において圧倒的なトランプ大統領支持率押上に寄与することとなるはずだ。
中共は、読み違えたことになるだろう。
泣くのは果たして、どちらだろうか。