ディズニーがほほ笑んだ~株券と一緒に成長した娘さん

雑話

これは21回目。夢の国には「夢がある」そんな話、余談だが、3歳の双子ちゃんと5歳の子供がいる知り合いの若旦那が、今年ゴールデンウィークにディズニーランドに行かされると白目を向いていた。(笑)

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いまでは株券などというものを見る機会がない。その株券の話だ。90年代、2度目の香港駐在をしていたときに、あるブラジル人家族と知り合いになった。米国証券のメリルリンチに所属していて、香港に駐在していたのだ。

ある晩、夕食に招かれてご馳走になった。正直、ブラジル料理というのは、あまりおいしいとは思えない。豆を煮込んだフェジョアーダなど、私好みの料理のはずだが、どうも味にパンチがない。得てして、大味なのである。

その家族には、娘がふたりいて、上のほうは、当時15歳になっていた。両親が黒髪、縮れ毛、褐色の肌なのに、上の娘は金髪・碧眼。どうみてもコーケイジアン(白色人種)にしか見えない。下の娘は、両親とおなじだ。聞けば、ポルトガル人をはじめ、イタリア人、ドイツ人など白色人種と、黒人、インディオなどの血が混じり合い、生まれてくる子供の髪や目の色、肌の色がどうなるのか、皆目検討がつかないらしい。これでは、人種差別というものが起きようはずもない。

そこで面白い話を聞いた。それが株券の話だ。その上の娘のことなのだが、彼女が生まれたとき、その日に父親は娘の名義でディズニーの株券を買ったというのだ。当時で10万円相当の金額だったというが、以来、ずっとホールドしているという。この家族に会ったのが、1990年のことだから、上の娘は1974年生まれということになる。彼女が生まれたその日の大引けで買ったのだそうだ。

買ってから15年経過し、ずいぶんと株価が上がったためそれなりの金額になっていて、私はこういう投資の仕方もあるのか、と感心した。いつの日か、娘が成人し、留学などするかもしれない。いずれは、結婚もするだろう。病気も心配だ。何があってもお金をつくっておいてやろうということで、父親はそれを株価の上昇に託したのだ。貯金する代わりに、株価に働いてもらおうという考えである。娘にまとまったお金が必要になるまで、ずっとホールドだ。

あれから23年が経過している。ふとこのブラジル人家族を思い出し、ディズニーの株は一体いくらになっているだろうか、と好奇心から計算してみた。私が出会った1990年の段階では、(同年の年末大引け値段で計算すると)、1974年大引けの値段に対して、約23倍。つまり、10万円だったとして、230万円になっていたことになる。

これだけでもたいしたものだが、彼女が25歳になったのは1999年。その段階で株価は約88倍。10万円が880万円になっている計算だ。現在、娘は39歳のはずだから、まさかいまでも持ち続けてはいないだろう。そう思いつつも、現在の株価で計算してみると、なんと176倍。ホールドし続けていれば、1760万円になっているはずである。

長期投資は、割に合わないという側面は確かにある。この20年間の日本株などその典型だろう。しかし、米国の株式相場には、長期投資という付託に応えることができるだけの、恐るべき力強いトレンドを持つ株があった。90年前に、「ねずみの化け物」ひとつのキャラクターで始まったディズニーだが、なんとその評価は大化けだ。その株券はカラー刷りで、さまざまなキャラクターが描かれていた。実に綺麗で、かわいらしいデザインだったのを記憶している。

日本でこのようなトレンドを実現させる銘柄はごく限られているが、アメリカでは、こんな銘柄が当たり前のように存在する。何もハイテク銘柄だけに限られた話ではないのだ。娘の誕生日に、粋なプレゼントを贈った父親にも感心するが、アメリカという国の底力をまざまざと見せつけられたことも確かである。



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