日本人の致命的欠点

雑話

これは171回目。日本人の持つ「曖昧さ」の美徳は、とてもリアリズムに富んでいます。このことを以前書きました。が、これはもろ刃の剣で、下手をするとリアリズムを殺すことにもなります。日本人の致命的欠陥は、同時にこの「曖昧さ」でもあるのです。

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日本は唯一の被爆国だからなどと、逆立ちした平和主義を言うつもりは毛頭ない。逆に、核武装でもしなければ、得体の知れない近隣のスーパー・エゴイズムを抑止できないなどという誇大妄想を言うつもりはない。私が知りたいのは、事実だけだ。

原子力発電というものは、今でも、どこまで安全なのか、まったくもって判然としない。不勉強だからなのかもしれないが、あれだけの地震(というより、実質的には津波による被害が圧倒的だったと思われる)によって、揺らいだ安全神話は、そう簡単には回復しない。

それでも、原子力推進を主張する人たちは(とくに政府・関係省庁の官僚)、原子力発電に頼らない場合、いったいどういう事態になるのか、明確にして具体的な説明責任を果たしているとはとても思えない。私のような素人でも分かるようにと、心から希求している。が、どうやら、それはおざなりにしたまま、どんどん現状復帰だけが進められてしまうようだ。利権が絡んでいるからではない、と断言するのであれば、科学的な論証をはっきり示してもらおう。

人間が処理できないものを使うということは、そもそも自己撞着(自己矛盾)のそしりを免れないだろう。なにしろ、核燃料のゴミ処理一つをとっても、10万年かかるそうだ。これは、処理できないのと同じではないか。

では10万年後の世界は、いったいどうなっているのか。人類は、どうなるのか。その想定は実に難しい。だから逆に、10万年前の世界を振り返ってみよう。10万年前というと、われわれ現代人がアフリカをその起点とし、一人のイブから世界に拡散していった時期である。ヨーロッパ、アジアに進出した頃には、すでに先住民のネアンデルタール人もいた。そして、ユーラシアとアラスカは陸続きで、マンモスが生息していた。

日本も大陸と陸続きで、日本海は湖だった。阿蘇山が大噴火し、世界一のカルデラを形成したのもこのころだ。続く各地の火山大噴火で、鹿児島湾や硫黄島などが形成される。1年に8~9センチメートル移動する太平洋プレートは、この間に約8キロメートル移動したことになる。10万年の変化はこうしてみると、とんでもない時間の尺度だということが分かる。

では、これから10万年後の地球や国家、人類の存続は、いったいどうなっているのか。見当もつかないような時間軸に、核という問題の処理を委ねるのは、あまりにも無謀な気がするのだがどうだろうか。

原子力がなければ、いったいどれだけ電力が不足になるのか。それをカバーするのに、どれほどの負担を強いられるのか。とにかくその事実を、まず誰にでも分かるように明らかにしてもらいたい。

311大震災のとき、原発がすべてストップして、大変なことになると大騒ぎだったが、けっきょく国民はごくふつうに節電をしただけで、余ってしまったではないか。どこが大変なことになったのだ。いったい、あの「大変になる」と騒いだ根拠はなんだったのか。「大変なことになる」といった人たちは、われわれを原発存続のためにダマしたのか。

この国は、いつもそうだ。問題が起こると、なんとなく責任の所在も不明なままに、結局みんなで赤信号を渡ってしまうのである。78年前に起こした戦争のときも、誰も責任を取らない伏魔殿の中で、「やむをえない」と決めつけてしまったところから、悪夢が始まったのではないか。憲法や政治体制やファシズム、イデオロギーの良し悪しではない。この点が日本人の最もだらしのないところだ。

曖昧でいいときもある。それで問題を上手におさめる智恵において、日本人に勝る民族もそうはいないだろう。しかし、曖昧ではいけないときがあるのだ。それが、今なのではないだろうか。

あの戦争でも、日本はアメリカに負けたのではない。日本自身の「リアリズムのなさ」に負けたのだ。戦力的に無謀な戦いだったなどと、データも見ずにいい加減な後講釈ばかりがまかり通っているが、そうではない。戦後74年たって、いまだにこの「無謀な戦争だった」という結論ありきの思考停止状態のままだ。呆れてモノが言えない。

緒戦の時点では圧倒的に日本が有利で、万に一つもアメリカに勝算など無かったのだ。勝ちのまま、戦争を終わらせることも十分可能だったのだ。当時の米海軍は、「今開戦すれば、米軍は必敗だから、なんとか開戦時期を遅らせてくれ」とルーズベルト大統領に懇請していたくらいなのだ。

「日本は負けるべくして負けた」などという、この大変な誤解についてはまた後日書くとして、なにはともあれ、日本人のこの事実とデータをもとにした、現実的な問題への対処の無さが、今この国に満ち満ちているほとんどすべての元凶だといってもいいかもしれない。

こんなことだから、先年、園遊会で天皇陛下(現在は、上皇陛下)に直訴状を手渡すなどという、意味不明の国会議員が出てきてしまうのだ。



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