アメリカにハトはいない~二大政党政治ってなんだ?

雑話

これは10回目。なんでも世評や、イメージで判断するのはあぶない。事実でなんでも判断しようってお話。

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どうして日本には、こうも恒常的な2大政党政治が成立しないのだろうか。英米の2大政党政治というものを、もっと学ばなければならないのか。しかし、アメリカの民主・共和両党も、そうたいした代物ではない。今回は分かったようで、なかなかその違いが分からない、このアメリカの2大政党について書いてみる。

一般に、共和党は保守的で、好戦的だというイメージが強い。人工中絶などもってのほかだ、という感じだろうか。LGBTに対して否定的である。そして、イラク戦争のインパクトが強いためか、やたらとタカ派だと思っている人が多い。

一方の民主党は、リベラルで、理想主義的で、ハト派の印象が強いだろう。人口中絶は、現実的に考えてやむをえない、と容認するほうであるし、LGBTのようなマイノリティ(少数派)の権利を尊重しようとするから、とても融和的に見える。

しかし、そこでだまされてはいけない。

そもそも政党というものは、資金を提供してくれるものに応えようとする。これは日本だけではない。アメリカはもっと露骨だ。共和党、民主党にいったい誰が一番政治献金をしているか、ということがポイントになる。共和党には、東部と中西部の伝統的なユダヤ人が資金供与をしている。ロックフェラーなどの石油メジャーがそれだ。民主党には、西海岸のシリコンバレーに代表されるハイテク業界、新興ユダヤ、そしてハリウッドの映画業界、メディアといったところが数多く資金供与をしている。

その政策の違いは、確かに保守的か、リベラルかという点で、カラーの差はあるのだが、一番わかりやすいのは、政治のもっとも究極な発動形態である戦争のやり方の違いだ。共和党は、資金提供者の権益が損なわれると判断すれば、国連などおかまいなしで、地球の裏側にまで平然と単独で海兵隊を送り込む。パナマに侵攻してあっという間に、その地の大統領を拉致してきて勝手に裁判にかけるという芸当も、共和党政権ならではの乱暴さだ。

一方、民主党は、戦争をするにも大義を必要とする。できるだけ国連における国際合意を取りつけて、各国の総意のもとに、アメリカが最大限の暴力を振るうことができるよう段取りを踏む。

しかし、どちらも戦争判断に躊躇(ちゅうちょ)はない。ただ共和党は、受益者の利権のために戦うので、短期決戦を好む。景気に悪影響が出たら、それこそ本末転倒だと考えがちなのが共和党である。ところが、民主党は世界を巻き込み、正義の鉄槌を下したがるために、戦争は予想外に悲惨さと、長期化、拡大化を伴う結果になりがちだ。

20世紀にアメリカが関与した大戦争を振り返ってみると、面白い事実が浮かび上がってくる。共和党、民主党のどちらが世界を巻き込む大戦争をやってきたか。第1次大戦は民主党のウィルソン大統領だった。第2次大戦は民主党のルーズベルト大統領。朝鮮戦争は民主党のトルーマン大統領。ベトナム戦争は民主党のケネディ大統領。民主党ばかりではないか。しかも、15年戦争と言われた泥沼のベトナム戦争から足を洗うという、名誉ある撤退を判断したのは、こともあろうに共和党のニクソン大統領だ。

民主党がハト派で、共和党がタカ派などというイメージは、微塵に崩れ去る。せいぜい、2度のイラク戦争を共和党がやったというだけだ。しかも、イラク戦争は、民主党がやった戦争にくらべてケタはずれに戦死者数が少ない。アメリカにハトなどいないのだ。ただ餌をくれる人のために、戦争のやり方が違うというだけのことで、どちらもタカであることに変わりはない。どうだろうか。少しは、アメリカの2大政党の本質が見えてこないだろうか。



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