台湾危機~衝撃に備えよ

政治・経済

これは361回目。

このところ時事問題を書くことが続いている。なにがどうなるか、それは正直皆目見当もつかないが、最高度に緊張の度合いを高めていることは間違いない。

その場所は、台湾海峡だ。

内憂外患で窮地に立つ習近平政権には、3つの選択肢がある。

一つは辞任。北戴河会議で下野することになるのか、自ら今辞任するか。経緯はともかくとしても、この選択は無い。なぜなら、過去彼が行ってきたおびただしい粛清・弾圧は、共産党内部にも多くの潜在的な敵を生んでしまっているからだ。下野したら最後、彼は終身刑か、殺害が待っている。

二つ目は、内部でさまざまな反習近平派と「取引」を行い、外部での戦狼外交を止める。米国や西側の要求に膝を屈し、外患をまず収束させる。そして一方では、国内経済の回復や、被災復興に全精力を傾注する。これは一番まともな選択だが、実はこれもありえない。対外屈服はそれすなわち、習近平政権が一挙に瓦解し、彼はやはり下野せざるをえなくなり、一つ目と同じ運命が彼を待ち受ける。

三つ目は、強硬策である。結局、これしか彼に残された道はなさそうだ。国内反対勢力を豪腕で粛清・弾圧に踏み切る。一方、国内不満(経済悪化=失業膨張、パンデミック拡大、洪水被災拡大など)のガス抜きをするために、台湾侵攻に打って出る。

当然、先日も書いたように、台湾本島への本格侵攻は不可能である。

台湾は、澎湖諸島に米空母打撃軍が存在しており、容易に人民解放軍は本島にたどりつけない。その前に、甚大なダメージを被ることは必定である。一方、台湾はかねてから、人民解放軍による本島攻撃が行われたら、中距離巡航ミサイルで大陸を爆撃すると公言している。

中国のアキレス腱は、三峡ダムである。ただこれは、長江流域の一般中国人にも膨大な被害が及ぶので、正直なところ台湾はこの選択をできるだけとりたくはない。

となると、北京の中南海を灰にするという目標選択がでてくる。これは現実的である。米国仕込みの最新鋭中距離巡航ミサイルは、超音波仕立てであるから、まず中国の地対空ミサイルでは捕捉不能である。

実際、7月15日、中国南部・福州の南方から未確認無人機が一直線に大陸上空を北上し、そのまま縦断。ロシア、北極圏を通過し、カナダに着陸した事実が確認されている。

中共のレーダーはこれをまったく捕捉できなかった。

イスラエルも再三にわたって、シリアを空爆しているが、イスラエル側の戦闘機隊はまったくの無傷が続いている。シリアの、そしてロシアのレーダーはこれを完全に捕捉できなかったのである。

すべて米国肝いりの軍事技術が貢献している。

このようなわけで、中共軍が台湾本島に攻撃をしようにも、澎湖諸島で足止めを食い、まごまごしているうちに、肝心要の北京・中南海が壊滅する。

中共サイドの被害はきわめて軽微であろう。一般中国人を巻き込むリスクは非常に少ない。限定攻撃だからだ。しかし、北京・中南海が壊滅するという事態は、中共の軍事力というものがいかに、ただの「張子の虎」であるかを、白日の下に明らかにすることとなり、中共のメンツは丸つぶれである。中国国民は、むしろそれを見て喝采することだろう。

中共にしてみれば、台湾侵攻に失敗し、北京・中南海が破壊され、いいところなしの結果になるわけで、それこそ習近平政権にとっては、反習近平派や国民からの糾弾に対してもはや抵抗すべくもなくなるはずだ。

そんな割に合わない三つ目の選択をとるほど、習近平主席は愚かだろうか?
なにしろ、アメリカが「中共を犯罪国家に仕立てる総仕上げ」を、手助けするようなものではないか。

誰にもわからない。

しかし、迎撃する台湾では、すでに今月に入ってから、全軍が戦闘配置についており、16日には実弾演習も行っている。

22日には、台湾の外務大臣は、中共の戦争準備が進捗しており、その軍事的脅威が急速に高まっている、と発表している。台湾が警戒しているのは、習近平政権が一気に台湾侵攻のカタをつけようとしているのではないか、ということである。

これは杞憂であれば、もちろん良い。

が、相手は自体ピンチの中にある。台湾侵攻という最悪の選択を取らないとは言い切れない。

この中共が、台湾に手をかけようと、爪を研いでいるのを察知しているだけに、アメリカは今月、矢継ぎ早に中共制裁の動きを加速させている可能性が高い。

それが、中共の台湾侵攻の抑止力になればもちろんそれに越したことはない。

しかし、アメリカは長期的にも中共を崩壊させる意思を明確に見せたわけであるから、単に目先の台湾危機の排除だけにとどまらない。

今、アメリカでは連邦議会において、超党派で対中共制裁のプロジェクトが進んでいる。むしろ国内経済対策より、優先度が高いくらいである。

学生ローンの支援策は今週末で期限が切れた。月末には失業保険特別給付金の支援策が期限切れとなる。

連邦議会はこの追加・延長などで審議しているが、なにしろ民主・共和両党の折衝であるから、一発では決まらない。

一方、8月には連邦議会も休会になるので、時間も無い。

その中で、矢継ぎ早に対中共制裁法案だけはどんどん成立していっているのである。

今、連邦議会が取り組んでいるのは、有事の際に、米軍が台湾に派遣することを正式に合法化する法案。そして、その先に予定されていると取りざたされているのが、なんらかの法的手段による「台湾の国家承認」である。

アメリカは急いでいる。

日本も、傍観者然として呑気に構えてなどいられないはずだ。

台湾は、今回のパンデミック騒動で、一等国であることの証明をしてみせた。見事な対応だったというしかない。

中共ウイルスがヒト→ヒト伝染をするという事実を、12月末の時点で掴んでいた。そして、ただちにWHOに報告しているのである。

この時点で、WHOが中共との隠蔽工作に走らず、台湾の建言を受け入れ、全世界に警戒を呼びかけていたら、これだけ膨大な人々の死は避けられたはずだ。

しかも、台湾はその後の国内対応も迅速だった。
人口2400万人。
感染者数、わずか500人。
死亡7人。

この驚異的な対応は、世界を驚倒させた。一躍ヒーローである。

九州ほどの面積しかない台湾。
自由と民主主義の台湾。

それが、夜郎自大の独裁国家・中共のメンツを、物の見事に粉砕してみせたのだ。

にもかかわらず、今般のWHOの疫病対策会議に台湾は招請されていない。「国家」ではないからだ。安倍政権が、「台湾を招くべきだ」と強くWHOに主張したのは、正当であった。

パンデミック対策で、唯一といっていいくらいの大成功を収めた国家なのだ。そのくらいの敬意も払えないようなWHOなど、アメリカの言うように脱退してもいいくらいではないか。

一躍今回のパンデミック騒動で、台湾はその名を挙げ、世界中の熱視線を浴びている。中共としては、こんな屈辱もなかろう。

習近平主席は、台湾覆滅に執念を燃やしている。
彼が台湾をどう思おうと勝手だが、ただ一つ、狂疾性を病んでいないことを祈るばかりだ。



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