声を挙げよう~自由と民主主義のために

政治・経済, 雑話

これは367回目。

8月10日、香港で、蘋果(アップルデイリー)の創業者ジミー・ライ、民主運動家のアグネス周(周庭)らが逮捕された。
香港の自由と民主主義の象徴的な存在が消えた。

(この投稿の後、12日、中共は香港内外の抗議圧力とアメリカの高圧姿勢に屈して、いったん両者を保釈している。但し、訴追、有罪、終身刑判決というシナリオを中共は予定しているはずだ。)

「一体、自分に何ができるんだ。」
「なにもできやしない。」

これが我々一般人の、偽らざる「感想」だろう。

しかし、アメリカのポンペオ国務長官が7月23日にニクソン記念図書館で世界に訴えたように、「われわれが中共を変えなければ、彼らがわれわれを変える。彼らがウイグルで行っているのと同じことを、間違いなくわれわれにする」、だろう。

8月9日、わたしは会員向けのセミナーで、語るもおぞましいウイグルや香港での現実を詳しく解説した。
ネットでその情報は誰でも共有できるし、わたしはそれをまとめただけのことだ。

今、日本人はこの現実をまだ、見て見ぬふりをするのだろうか。
ずっと、日本という国は見て見ぬふりをしてきたではないか。

法輪功の弾圧でもそうだ。

2009年における、中国共産党政府の統計では臓器移植が1万1000人である。
当局は、65%が死刑囚の死体から臓器摘出したと言っていた。

しかし、2008年の中国における死刑囚数は781人だ。

数字が合わない。

国連から派遣された調査団の報告では、2001年から5年の間の臓器移植のうち、4万件が「出所不明」と判断された。

法輪功というのは、気功を学ぶ一種の宗教団体だが、とくに変わった教義はない。
伝統的な道教や仏教が混在したもので、それ自体もともとあったものにすぎない。
ただ、気功術を体で使って学ぼうという団体である。

そんなものを、なぜ中共は徹底的に弾圧し、学習者を片っ端から逮捕し、「生きたまま」臓器移植の犠牲にしてきたのか。

それは、法輪功という団体が、頭の先から足先まで、徹底した反共主義に貫かれていたからだ。
反共の理由はただ一つ。自由と民主主義の尊重である。中共政府はこれが許せなかったのだ。

英国BBCは潜入取材を試みた。
その結果、武漢警察総合病院 臓器移植研究所の王建立主任が、「潜入取材」と知らずにドナー提供を説明する会話を録音することに成功した。
そして、暴露。

・・・
「法輪功学習者の健康体から摘出しています。」
「それは、ドナーを病院に連れてきてすぐに移植手術してくれるんですね?」
「そうです。直接生体から摘出、移植しています。」
・・・

これはyoutubeで拡散されている。誰でもその背筋が寒くなるような、中共の臓器移植現場の様子に吐き気をもよおすはずだ。

これと同じことは、チベットで長年行われてきた。
日本はこれも見て見ぬふりをした。

ウイグルで今、同じことが行われている。
一般に言われているような、強制キャンプがあるとかないとかいうレベルではない。
新疆ウイグル自治区全体が、ほぼ強制キャンプ状態と化している。

今、中共ウイルスがこの新疆ウイグル自治区で猛威を奮っているが、中共政府はなにも処置せず、放置している。
人口が減れば、それだけ好都合だからだ。

男性は中国各地の企業に送られ、強制労働を強いられている。
人件費高騰で競争力が失われてきた中国製品。
これに競争力をつけさせるのに、一番手っ取り早い方法は、労働賃金ゼロの奴隷労働者供給である。
それが、全土で行われている。

豪州情報筋が暴露した、直接間接、このウイグル人強制労働に加担していると糾弾されたのは、グローバル企業83社。

アディダス、ギャップ、トミーフィルフィガー、三星、BMW、GM、ジャガー、アップル、グーグル、マイクロソフト、ラコステ、ZARA、ラルフローレン、VWなど。・・・この内、日本企業は、日立、ジャパン・ディスプレイ、三菱電機、ソニー、ミネベアミツミ、任天堂、東芝、シャープ(撤退表明)、パナソニック、TDK、ユニクロの名前が挙げられている。

もし企業は、「違う」というのであれば、証明しなければならなくなるだろう。アメリカではそうした法案が今成立しようとしている。

これらの企業が中国に工場を持っていたとして、直接ウイグル人の奴隷労働を使用していないとしても、たいていは中国の下請け企業が生産に従事していることが多い。さらにその孫請け企業もあるだろう。つきつめていったときに、ウイグル人の奴隷労働が使用されていると、豪州の情報筋は企業名のリストを暴露したのである。

これは氷山の一角だという。
そして、情報筋はこう言っている。

「あなたがお気に入りのナイキは、もしかしたらウイグル人の尊い命の犠牲の上でつくられたものかもしれない。それでもあなたはナイキを買いますか?」

ドイツでは、議会においてこの件を追及されたVW(フォルクスワーゲン)が、「知らなかった」と証言し、大問題となり、蜂の巣を叩いたような騒ぎとなった。
「実態を認めた」にほかならないからだ。

男性だけではない。
ウイグル人女性は不妊手術を強制されている。
ジェノサイド(民族浄化)である。

わたしたち日本は、これに見て見ぬフリをしてきたのだ。

なぜ中国でかくも急ピッチに臓器移植技術と処理能力が出来上がったのか?
それは長年、ドイツの医学会、医療事業者が、中共のそれらと密接に関係を持ち、お互い人事交流(留学、現地指導など)を行ってきたためだ。

もちろん、当初はこのような非人間的な用途に使われるなど、思っても見なかったかもしれない。
しかし、結果としてドイツは加担したことになる。

またVW、BMWなど自動車産業を中心に、ドイツは他の欧州各国や日米に比べて、突出して中共への経済依存度が大きい。

ドイツ国内では人権団体をはじめ、ドイツ企業が中共でこうした非道に加担しているのかいないのか、徹底調査を要求する声が炎上してきている。

フランスは、国連に対しウイグル地区へ査察団を入れよと要請している。中共は当然拒否している。

イタリアは、アパレル産業の生産部門がほぼ中国企業に牛耳られており、欧州では数少ない、中共の「一帯一路」プロジェクトへの積極支持を貫いている。

一方、アメリカ、英国、豪州、カナダ、ニュージーランドと、アングロサクソン系の旧大英帝国は、軒並み反中共で連携し動き始めている。

思い出さないだろうか。
どこかで見た景色ではないだろうか。

中共解体を旗幟鮮明にしているアングロサクソン諸国(米英、豪州、カナダ、ニュージーランド)

これに対する親中派のドイツ、イタリア、そして・・・わたしたち日本はどうするつもりなのだろうか。

アングロサクソン vs ドイツ=イタリア≒日本(?)

この構図は、奇しくもわたしたちの国がかつて経験したものだ。

また戦前と同じ選択の過ちを犯すつもりであろうか。

今、香港の自由と民主主義が断末魔の声を挙げている。

5月29日、トランプ大統領は10分の、非常に短い、しかし心に滲みるスピーチを残した。

「香港は中国の未来のはずだった。世界は、香港を見れば中国の未来がわかると信じた。まさか、香港が中国の過去の悪夢になってしまうとは、思ってもみなかった。・・・」

トランプが好きとか、嫌いとか言っている場合ではもはやない。

こういうときに、いつも言葉に出てくるのが、冒頭で述べた「どうせ、自分にはなにもできやしない」という一言だ。

そう言った瞬間に、その人は中国で行われている非道に加担したのと同じだということに気づいてほしい。

「わたし一人がなにをしたところで、どうにもならない」などということは無いのだ。

自由と民主主義とは、声を挙げることそのものなのだから。
独裁というものが一番恐れるのは、この憤然と湧き上がる「声」の集合体なのだ。

この声が(理念と言ってもいい)、独裁国家の中に入り込むや、おぞましい体制は自動的に崩壊するのである。

朝日新聞といい、与野党国会議員といい、中共におもねる親中共派の人々の言動をよく見ておくがいい。
彼らは、長年、そして、今も、誰一人として声を挙げようとしない。

そして、財界もそうである。
中国との商取引に齟齬をきたすと畏れ、誰も口にしないのである。

かつて中国で反日デモが起きたとき、ユニクロの現地店では、暴動によって破壊を免れるために「わたしたちは、尖閣諸島が中国領であることを支持します」という横断幕を掲げた。
これが日本で大問題となり、会社側は「店舗を守るために致し方なかった」と釈明した。
利益のためであれば、極限の状態で主義主張を曲げるということらしい。

そんな風に、わたしたち日本と日本人は、隣の大陸で長年行われてきた非道に対し、見て見ぬフリをしてきたのだ。

こういうわたしたちのことを、一言で表現すればどういう言葉が適当だろうか。

「臆病者」

それに尽きる。

最後に、この少女の顔を、そして名前を覚えておいてほしい。

陳彦霖(ちんげんりん)。

15歳だった。デザイン専門学校生だ。
彼女は、昨年から激しくなった、香港の民主化運動に頻繁に積極的に参加していた。
多くの中学生が参加したのは、ご存知の通りだ。
彼女もその一人だった。
写真を見ても、可愛らしい少女だ。

その彼女は、昨年9月19日、下校途中から行方不明になった。
22日、学校の近くの油糠海岸に全裸で浮いた。
彼女は、水泳の選手である。

警察が、彼女だと正式に認めたのは10月9日。
死体発見から17日も経過している。

通常、香港警察は事件性が疑われる不審死の場合、数ヶ月は死体を保存するが、事件性無いとして処理。
家族に遺体引き渡しの前に火葬している。

学校の同級生や教職員たちは、猛烈に抗議をしている。
未だに闇の中だ。

彼らは言う。

「可愛らしい15歳の女子が、下校途中から行方不明となり、全裸で死体が海に浮いていたのだ。これを事件性が無いと判断する警察の良識とは一体なんなのか?」

14日、学校側がCCTV(監視カメラ)の映像を公開した。

映像は、彼女が乗ったエレベーターのドアが開いたところで終わっている。
ところが、ドアの外側には警察官の警棒が見えている。
映像は改竄(かいざん)されており、香港市民の警察不審を炎上させた。

世論は騒然となった。
警察は同日の夜、学校のCCTV映像やパソコンをすべて押収するという一挙に出た。
映像証拠は闇に葬られた。

しかも、彼女の母親、叔父は、この事件以降行方不明となっている。
中共系のメディアのインタビューに、この母親が答えているが、陳彦霖の友人は「あの人は、彼女の母親とは別人だ」と証言している。
この時点ですでに、ビルから飛び降り自殺をした「男性」が、陳彦霖の本当の母親ではないかという疑いが濃くなっている。
なぜなら、(死体写真がすでにネット上に出回っている。ここでは出さない)飛び降り自殺であれば、飛び散る出血で大変な惨状になるはずだが、一滴の血も現場にはないのだ。
これを警察が、「男性」が飛び降り「自殺」をしたと公表していることに、香港市民は深い疑念を抱いている。「飛び降り自殺した男性」の死体写真(顔)は、素人が見ても、母親と同一人物である。髪も、男性とは思えない女性の長さである。しかし、真相究明を求めるデモは、警察により強制的に排除された。

このような事例が、「国家安全法」が香港にも施行された7月から、多発しているのだ。

日本という「遠い安全地帯」にあって、それでも声を挙げる人は少ない。
この国と日本人というものに対するわたしの信頼は、正直音を立てて崩れている。

アメリカはすでに、香港の自由と民主主義を損なう中共の「国家安全法」を違法とし、それに加担する中共の組織・団体に対する制裁を実施するための法律成立させた。

制裁は、入国拒否、米国内のすべての資産(現金、企業、不動産、利権など)凍結、それにとどまらず、加担した内外の組織・団体への制裁・・・。

アメリカが一つのモデルを示し始めたのだ。

「アメリカの物マネか」とか、「中国との経済関係は重要だ」などと言っている状況ではない。
今、こうしている間にも、香港では命を落としている者がいるのだ。

朝日新聞など、中共に批判的な論評を一切しないメディアや、地上波放送局、野党議員、自民党内の親中派議員に対し、一人でも多くの日本人が声を挙げてほしい。

自身の私的ブログで、一度でいい。
この現実に対して、ノーと言ってほしい。

一人が、百人になり、それが千人の声になり、万人の声となって、その怒涛の「うねり」は世界を動かす。
砲弾でも、ミサイルでもない。
言論こそが、最も強烈なパワーを持つのだということを、日本人はもっと自覚してほしい。
それが、自由と民主主義の恐るべきパワーなのだ。

やがてわたしたちが、後悔する前に。



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